骨折しているかもしれない!-頻度の多い3つの骨折について-
どのような状態のときに「骨折しているかもしれない!」と思い出すべきでしょうか。
転倒して机の縁や浴槽に胸をぶつけた場合、深呼吸したり咳払いしたりすると胸が痛くなります。「肋骨骨折」です。肋骨を骨折するとものすごく胸が痛みますが、歩くことはできます。重症化することはあまりありませんが、鎮痛剤を飲んで、バストバンド(コルセットのようなもの)を装着し、重いものを持たないように安静にして、しっかり呼吸することが大事です。まれに血がたまる血胸や、数日後に肺炎になって息苦しくなることがありますので、迷わず医療機関を受診しましょう。
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次に、転倒して床に腰や背中をぶつけた場合、すぐには立ち上がることができず、背中がものすごく痛くなります。「脊椎骨折」です。腰の下の方が骨折していると「腰椎圧迫骨折」、腰の上の方なら「胸椎圧迫骨折」です。入院が必要になる場合が多く、安静にして胸元までの長めのコルセットを装着します。寝たきりにならないように、痛みの治療と筋トレなどのリハビリテーションも積極的に行います。腸が刺激されて便秘症になったり、痛くてトイレに行きたくないからといって水分摂取を制限すると膀胱炎になったり、ずっと寝たままだと誤嚥性肺炎になることがあります。また骨が癒合せずに背中の痛みが遷延し、下肢痛や麻痺が出現してきた場合には手術を要することがあります。 |
3つ目は「大腿骨頸部骨折」と「大腿骨転子部骨折」です。転倒して、床に腰や股関節の脇の固いところをぶつけた場合、立ちあがることも動くこともできず、脚の付け根がものすごく痛くなります。だれも動かせないので救急搬送されることが多く、そのまま入院となります。様子を見ても回復しないので、基本的には手術治療をしなければなりません。よく聞かれるのが、「高齢だから手術は無理じゃないですか」という質問です。高齢でも、心臓機能、腎臓機能が保たれている方もいますし、内科医、麻酔科医とも相談し高齢の方でも手術します。さらに、ケガする前にはどの程度活動していたのかも考慮して整形外科医が中心となって手術適応を決めていきます。もちろんご本人やご家族、介護されている方のお話も伺います。手術の後は、かなり早期から筋トレや立位歩行訓練などを行います。もちろん早期にリハビリできる手術方法だからですが、静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群、ロングフライト血栓症と呼ばれることもあります)や廃用症候群(寝たきり)の予防にもつながります。その他に感染や再骨折にも注意が必要です。
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